どうも、しゃおろんです。
今回はコロナの影響で再び全世界で読まれまくっているフランス文学『ペスト』を題材にお送りします。
私の独断と偏見と高慢で、重要ではないと判断した部分は一部ネタバレありなので、完全にフラットな状態で読みたい方はご注意を。
ペスト作者のアルベール・カミュって誰?
私がカミュを知った衝撃のきっかけ
個人的なストーリーになりますが、まずは私はとカミュとの出会いからお話させてくださいw
約11年ほど前大学生だった頃、レンタルビデオ店の準エロコーナーみたいなところで『カリギュラ』という作品を何気なく借りたんですね。
実在したローマ帝国の皇帝カリギュラがテーマで、鬼のような暴君として知られていた人物です。
映画『カリギュラ』の中身はそんなメインテーマが一切頭に入ってこないほど過激なエログロの連続で、童貞だった当時の私は恐怖に近い衝撃を受けますw
主演は、『時計じかけのオレンジ』で有名なマルコム・マクダウェル、
その他有名女優も出演しているにも関わらず、監督はイタリアAV界の巨匠というすごい作品ですw
あまりのバイオレンスとエロがあまりに過激すぎて、当時ボストンなどで上映禁止になったことなどから、日本でも話題になり、カリギュラ効果なんて言葉が誕生しました。
カリギュラ効果とは:禁止されると逆にやりたくなる心理現象のこと(ex: パンツみるなと言われたら逆に見たくなる、テレビ番組で年収はいくらですのところにピーって入ってたら逆に知りたくなる、カリギュラ見るなと言われたら逆に見たくなる)
DVDやブルーレイでは過激な部分カット版しかないようで、そこがないならホンマに全く別の映画になってしまいますw
スペイン語版無修正カリギュラがYoutubeにあったので一応載せときますw
日本語版は現在入手困難みたいですね。
さてさて、そんな感じで衝撃を受けた私は、暴君カリギュラ自体について調べまくっているうちに、戯曲『カリギュラ』と出会います。
これがアルベール・カミュの戯曲『カリギュラ』だったわけで、そこで初めて「カミュってめちゃめちゃすごい人やんけw」と知ることに。
遠回りしましたが、これがカミュと私の出会いの瞬間で、以降彼の文学にのめり込むことになっていくわけですw
ってことで本題のカミュに話を戻しましょうw
アルベール・カミュの出身、作品、思想など
アルベール・カミュ(1913〜1960)はアルジェリア出身のフランスの小説家で、43歳の若さでノーベル文学賞をゲットしています。
アルジェリアは当時フランス領で、北アフリカの国、首都はアルジェ。
私が住むセネガルからも近いし、フランス語も通じるし、美女も多いので、コロナやら治安やら的に大丈夫になったら絶対行きたい国の一つであります。
どんどん話が逸れていってしまってますねw
そんなアルジェリアで、カミュは生まれてから大学卒業、就職と青年時代を過ごしており、その作品の舞台もアルジェリアが多いです。
有名な著作に、『異邦人』『ペスト』『シーシュポスの神話』などがあります。
異邦人の書き出し、
きょう、ママンが死んだ。
は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
この『異邦人』は私にとっても思い入れのある本で、私がフランス語の勉強を始めて以来、一冊丸々フランス語で最後まで読み切った最初の本でもあるのです。
『異邦人』の原書『L’étranger』(レトランジェール)の書き出しは、
Aujourd’hui,maman est morte. (オージュールドゥイ、ママン エ モールト)
です。
Aujourd’hui→今日
maman→ママン(おかん)
est morte→死んだ
ということで、めちゃめちゃ直訳だったことに衝撃を受けましたよねw
mamanを母と訳さずにママンのままいったところに訳者の実力を見せつけられた思いでいっぱいになりました。
『ペスト』作中にも『異邦人』の主人公が起こす殺人事件の話がちょろっと登場します。
さてさて、カミュの作品の特徴に”不条理”がテーマになりがちというのがあります。
カミュのいうところの”不条理”は、明晰な理性を保ったまま世界に挑むときに出くわす不合理性のことで、その不条理に目を背けずに立ち向かうことを”反抗”と呼び、その反抗の態度がが連帯を生むと。
なんじゃそりゃってなるかもですが、カミュの時代でいうと疫病、戦争、テロ、キリスト教、全体主義みたいなのがわかりやすい不条理の例ですね。
当ブログ的な言い方をすると、絶対積極マインドセットで人生に立ち向かって最中に訪れる、自分の力ではどうしようもないような困難のことを”不条理”、そしてその不条理の中にいても絶対積極で生きることを”反抗”と呼ぶ、そんなニュアンスです、だいぶ簡略化しましたが。
コロナというパンデミックも不条理ということになるかもしれない世界の流れがある中、もろに疫病がテーマの『ペスト』から学べるものがあるということで見直されてるわけです。
そんなアルベール・カミュですが、彼のお兄ちゃんの孫がタレントのセイン・カミュ氏なんですね。
親しみやすさが一気に増したのではないでしょうかw
ペストのあらすじ。コロナ禍と共通点多い!?
雑にあらすじを紹介します。
舞台は、アルジェリア第二の都市であり、港町のオラン。
オランは実在する街で、現在コロナの感染者も出ています。(250人。2020年5月4日時点)
あらすじ
超絶雑にあらすじをw
1、194◯年、アルジェリアのオラン市にて大量のネズミの死骸が発見され、人々は「えっ、なにこれ?」となる。
2、ネズミだけでなく、死人が出るにつれ街はパニックに、「ペストですやん」となる。
3、オラン市をロックダウン、人々は鬼不安な人生に突入。
4、経済へのダメージや死者の増加から、絶望への疲労がマックス高まる。
5、感染者増加の勢いがピークを迎え、疲労を通り越し、絶望がコンフォートゾーンに。
6、なんか知らんけどペストからの回復者が出てくるにつれ終息へ。
7、集団的不条理への結論。
ストーリー自体はペスト発生から終息までなので上記のような展開になるのは想像がつきますが、見所は登場人物の人生や思想の変遷ですよね。
小説ペストとコロナ禍の共通点、相違点
●ペストとコロナの共通点
疫病の発生→パニック→ロックダウン→経済的ダメージ→人々の疲弊→終息
という疫病発生からロックダウンしたパターンにおいて都市や人々が辿るプロセスはたしかに似ています。
●ペストとコロナの相違点
・ペストはかかったらほぼ死ぬ、コロナはペストに比べて致死率は鬼低い。
・ペストはエピデミック(オラン市だけでの発生)、コロナはパンデミック(世界的流行)
・オラン市のペスト禍では大切な人に会えないし安否も確認できない。現代のコロナ禍では携帯で連絡取り合える。
・ペストの設定においてはガチで仕事ができないため。現代はテレワークがある。
みたいなところですね。
基本的に『ペスト』はロックダウン下でどうすべきかを伝える本ではなく、カミュ自身の不条理への態度の表現です。
もっというと『ペスト』第二次世界大戦におけるナチス侵攻という不条理に対する比喩と捉える方が一般的ですね。
ペストの登場人物まとめ
登場人物のメインとサブの分類に関しては、フランス語版wikipediaのLa Pesteを参考にしております。
メインキャラクター
●ベルナール・リユー(Bernard Rieux):主人公で医者。この小説の語り手。繊細でヒューマニスト。ペストに目を逸らさず真正面から立ち向かう。
●ジャン・タルー(Jean Tarrou):主人公リユーの隣人でよそ者。冷静に状況や人間を理解する。それを記した日記も語り手代わりに。父親は死刑宣告人。弱者の立場にたった共感の鬼。
個人的には主人公のリユーとその友人のタルーを足したニュアンスが作者のアルベール・カミュの哲学を表わしているなという印象を抱いております。
サブキャラクター
サブキャラクターの一部紹介です。
●ジョセフ・グラン(Joseph Grand):作家志望の下級役人爺さん。
小説の鬼細かい表現にこだわりすぎて1ミリも進まない、若い頃に去られた嫁を引きづりまくり。
ペストで逆にお役目スイッチ発動。
●コタール(Cottard):密売人。ペストのおかげで逮捕される予定がうやむやになり、解放感マックスで転売にて金儲けまくり。
コタールの良き理解者であるタルーにラポールを感じがち。
ペストが終息してメンヘラに逆戻り。
●パヌルー(Paneloux):イエズス会の神父。インフルエンサー。「ペストは天罰やからちゃんと反省すべし!」とイキるものの、罪のない子供の死を目の前にしてアイデンティティクライシスに。
●レイモン・ランベール(Raymond Rambert):パリから来ている新聞記者。嫁をパリに残してロックダウンで閉じ込められる。最初は脱出希望マインドセットだったが話が進むにつれて激変、個人主義から共同体感覚発動へ。
●オトン(Othon):予審判事。ペストに無関心だったが、息子がペストで死んでからマインドチェンジ。リユーやタルーの保健隊に参加。
●リシャール(Richard):街で有名な医者。
これらの人物の他にも、その家族メンバーを筆頭に色々登場します。
基本的には、主人公リユーと準主人公タルーは安定感抜群、その他のメンバーは生き方や心境、人生そのものも変化しまくりということを念頭に置いておくと読みやすいかなと。
個人的に好きなペストの名場面ベスト7選
1、主人公リユーが下級役人グランを描写するくだり
リユー「市長の小役人以外の何ものでもない。 〜中略〜 とるに足らぬ人間のあらゆる風貌。〜中略〜 たといまったく先入主のない頭でみても、彼は、日給六二フラン三十の市臨時吏員という、つつましやかでしかも不可欠な職務を営むために、この世に生まれてきたように思われるのであった。」
これを彷彿させる人物がペスト禍では逆に普段イキっている勢より活躍するおもろさです。
2、カミュの別作品『異邦人』での事件がちょろっと話題に出る場面
煙草屋の内儀はアルジェで評判になった最近のある逮捕事件について話した。それはある若い商店員が海岸で一人のアラビア人を殺した事件であった。
ペストのストーリーとは1ミリも関係のない『異邦人』のくだりをねじ込んでくるところに、フランス流の小粋なオシャレさと、なんやかんやでカミュが生まれ育ったアルジェリアへの愛とが垣間見える気がして「カミュ好きやわ。」ってなりますw
3、鬼のようにIQが下がった時の大衆の行動
実際のところ、人々はずいぶん飲んだのである。あるカフェが「純良な酒は黴菌を殺す」とビラを掲げたので、アルコールは伝染病を予防するという、そうでなくても公衆にとって自然な考え方が、一般の中で強まってきた。毎晩、二時頃、カフェから追い立てられた相当の数に上る酔っ払いたちが街頭にあふれ、そしてしきりに楽観的な言葉をわめき散らしているのであった。
この他にも、ハッカドロップが予防効果あるということで薬局から品切れになるくだりもありますw
コロナ禍でいうマスクがなくなるのと似ていますよね。
4、パヌルー神父の説教への主人公勢の反応
パヌルー神父「当然の報いなのです。 〜中略〜 みなさん跪いてください。 〜中略〜 反省すべき時が来たのであります。」
後に、パヌルー神父が保健隊に参加してきたとき、
リユー「彼があの説教よりはましな人間だとわかっただけでもうれしいね」
タルー「みんな誰でもそういうものさ。 ただ機会を与えてやることが必要なのだ。」
と、神父より高い抽象度からの発言w
一貫してキリスト教や神を拒否していたカミュの思想がしっかり出ていますね。
5、ペストの絶頂期におけるオラン市全体の描写
ペストの被害がピークに達する第3章全体を通して迫力がすごいです。
生存市民者の暴行、死亡者の埋葬、引き離された恋人の苦しみ、狂乱勢の放火などなど。
「それでもまだ俺以上に束縛されている者があるのだ」というのが、そのとき、可能な唯一の希望を端的に示す言葉であった。
こういうことですね。
6、犯罪者コタールのイキった名言に対するタルーの内心のツッコミ
コタール「彼らは自分でわざわざ生活を暗くしてるんですよ、黙って平気でいればいいのに。中略。彼らが不幸なのは自分で心の手綱を緩めないからですよ。」
これに対して、
タルーの内心「彼のゆうてることは一理ある。けど、コタールは以前に、いつ逮捕されるかもしれん不安や恐怖をすでに経てきたから、他の人らもペストを通じて恐怖を経験するのは普通やし、個人じゃなくて集団やから余裕やんと思ってる点は間違ってるよねw」(鬼意訳)
常にリユーとタルーは冷静でありますw
7、ペスト終息後のリユーとタルーのラポール
「ひとつ、どうだ」と彼は言った。「友情の記念に、いいことをしようか?」
「ああ、なんでも、君の好きなことをやろう。」
「海水浴をやるのさ。未来の聖者にしたって、こいつは恥ずかしくない楽しみだ。」
リユーはほほえんだ。
正直あまり理解できませんでした、カミュの思想を表す、”不条理→反抗→連帯”、このシーンにおいて連帯が、友情を通して想像以上にポップに描かれており驚きましたw
以上、私の好きな場面7選でした。
おまけ:作中でリユー、タルーがランベールに「アルジェリアから脱出せんと残って保健隊に入って欲しいわー」という話をバーでしていた時に拡声器から流れていた音楽『セント・ジェームズ・インファーマリー』
後にランベールの部屋にタルーが訪ねる時も流れている。
ランベールが死ぬほどリピートしている曲。
【音声】ペストについて語ってみた
はみラジでもカミュのペストをテーマに話したのでぜひ聞いてみてください。
今回は以上です。
ぜひカミュのペストを皮切りに他の文学作品などにハマって人生がさらにおもろくなるきっかけになればええなと思います。
ぜひコロナ禍で自粛している間に読んでみてはいかがでしょうか。
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ブログやペストの感想等あれば気軽に連絡くださいね。
メール:shotaokumura.kinshu@gmail.com
お読みいただきありがとうございました。
それでは!
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